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蟻の飼育4 :七人の蟻

あれからどれくらいが経ったろう?何がなんだか判らないパニックから落ち着いた今も、何がなんだか判らないことには変わりがない。

判ったことと言えば、狭い空間に放り込まれたこと、そしてそれが外の世界に繋がっておらず、巣に帰れないということ。何もないと思っていたけども、湿った地面が実は食べ物で、飲み食いに困ることもなく、すぐに死ぬようなことはなさそうなこと。そして同じ境遇の同胞が、自分のほかに6人居ること。それくらいだ。

自分も、他の連中も、冷静さを取り戻したものの、放心状態だったりとりあえず寝てたり、さらに細部を調べて歩くものも居たりで、つまりはどうすればいいのか、判らないでいた。夜がきて、朝が来た。

気がつけば一人の男が穴を掘っている。

私「何をしてるんだ?」

男「穴を掘っているのさ」

私「見れば判るさ…でも、女王も居ないのに?」

男「ああ、いないな。無駄なことかもな」

私「それでも掘るのか」

男「俺には、これしかできることが無いから」

そういうと、男は手を止めてこちらを向いて言った。

男「これしかできない、ってのはそうだが、ここにきて照れていても仕方ないな。…正直、俺は穴掘りが、嫌いじゃなかったりする。楽しいと思うことも多い」

と言って、少し照れて笑った。他の蟻たちも何人かは集まってきた。集まらなかった者も、注目している。

男「それにいつか戻る日がきたときに、穴の一つも掘れないようじゃ、どの道生きていても仕方ないからな」

別の男「そうだな。他にすることもないし、退屈で死にそうだから俺も手伝おう」

さらに別の男「掘っていくうちに、この世界からの脱出口が見つかるかもしれないしな。少なくとも出口のないことが分かり切った地上よりは希望もある」

別の男「そうそう。女王がいなくても冬は来る。巣は必要だ」

なんだかんだといいながら、ほとんど全員で掘り始めてしまった。

誰かが呟いた。「帰る巣が無くとも、巣に女王が居なくとも、食い物に不自由しなくとも、やることは結局一緒だったんだな」

P5220002.JPG

僕らの仕事は、役に立つことも無く後に残らないかもしれない。そんな僕らの仕事に終わりはあるのだろうか?そして終わりがきたとき、僕らはどうなるんだろう。終わりがきたら、そこから何をすればいいんだろう。

コメント (5)

天ちゃん:

終わりが来たら、また新しい役に立たない何かをするような気がしてます。(^^;
でもそれでもいいかも。
生きるってそんなことなのかもしれないなあなんて思ったり思わなかったり。(どっちやねん)

女王アリが捕獲できたらどんなに素晴らしいことになるか・・・? アリが増え過ぎちゃって困るかも知れませんね。

metro:

>天ちゃん さん

いつでも何か楽しみを見つけられれば一番ですよね。なあんて思ったり思わなかったり(ど

>むろやん

女王アリ込みで飼うと、その通り、増えすぎて大変らしいですよ。ケースもあれじゃ小さかろうね。

KAA:

仕事の80%は20%の要員によって行われる法則で
熱心に仕事してるのは1~2匹と見ました.

metro:

>KAAさん

> 20%の法則
確かに。
そっちの話の方向性もあったなー。

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