九州遺産
九州で見つけた本です。タイトルを見てどう思いますか?「世界遺産に便乗して観光客を呼ぼう」という浅はかな戦略が見て取れて笑えました。しかし手にとって、最初の印象が間違っていたことを知りました。九州に残る、圧倒的な近代~現代(幕末あたりから昭和30年ごろまで)の土木、建築物を美しい写真と、普通より一歩踏み込んだ建築的見解で語られています。「レンティキュラー・トラスの橋が…」とか言われても最初は面食らうけども、そういった踏み込んだ言葉がちっとも厭味じゃなくて、むしろ建造物への優しいまなざし、作者への賞賛溢れるものだから、読んでいて気持ちいいんですよね。
ページをめくると、旅行中に見たものが出てきます。そういえば、ハウステンボスから長崎に向かう途中、天を突くような異様に巨大な煙突が見えたよね。なんでもない窓の風景をシュールにしてしまうそれは実は煙突ではなく、100mをゆうに越える、無線送信所で、ニイタカヤマノボレを発信したと言われる軍事施設だったのです(建築マップ_長崎_針尾送信所無線塔)
長崎を走る路面電車、レトロな雰囲気がいいよねぇ、なんて言ってたけど、レトロなんていってもカタチだけのものじゃなくてホンモノのレトロもので、モーターは明治時代のものが現役で動いている、なんて知らなかった。長崎の路面電車は全国から買い集めてあることもあって、実は昔の都電でさえ走っている。知ってれば乗りたかったなぁ…(参考:路面電車まつり2004 遊覧電車)
山奥で誰に見られることもなく、水をたたえオーロラのようにたなびき広がり流れ落ちる白水溜池堰堤(参考:白水溜池堰堤/白水ダム(豊後竹田市)・写真満載九州観光)の優雅。溜池の堤防なんて、実用本位で作るものでしょ?なんでここまで手を入れるの?…というと、河内貯水池もそれに劣らない。貯水池の建築でこれは気が狂ってる(褒め)
知られざる九州。九州という言葉でくくるのもどうか。めくるたびに現れるのは先人の努力と工夫の賜物が今も生き続けているというさまだ。
何も知らなければ、由緒ある古墳もただの丘に過ぎない。丘ではないのだ。そこある人の手のあと、偉業と歴史。誰も見てくれなそうな、土木建築物にこめられた手間。
坂元の棚田は、棚田百選にも選ばれる棚田だそうだ。ふーん。…しかし写真を見て違和感。何かが違う。そうか、全ての棚田が整然としすぎているのか。それに、…全ての棚田が石垣作り?!城みたいだ。というより城よりすごい。(参考:坂元棚田)行きたい…
筑後川のデレーケ導流堤は引き潮の時だけ現れるカーブの美しい石の道で、現代美術作品としか見えないのだけども、土木上の意味を持ち100年以上、今日に至るまで働き続けている「実用品」だというのも信じられない。(参考:近代遺産を訪ねて)
曽木発電所跡は、うっそうと茂る緑の中に沈み、アンコールワットの遺跡のように人目を忍んでいる。春先に姿を現し、秋口には水中に没するということだそうだ。是非見たい…(参考:曽木の滝と発電所遺構)
明正井路第一拱石橋(大分県竹田市)は、ローマの水道橋遺跡のように見えて、まさか本当に、橋の上を水が流れてるなんてきっと通りかかっても思わないでしょう。
リンク先よりも綺麗な写真としっかりとした解説が101箇所260ページに渡って記載。惜しくも記事からこぼれた「NEXT151」リストもあります。自信を持ってオススメする一冊。九州遺産。コレはいいですよ。
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